第2回「職場適応援助者養成研修の在り方に関する研究会」に参加して(小川)

昨日2020年9月28日(月)に厚生労働省の第2回「職場適応援助者養成研修の在り方に関する研究会」が開催されました。この研究会は、ジョブコーチの制度全体というよりも、「養成研修の在り方」に焦点を絞った研究会ですが、今回興味深いデータが出されました。リンクは「障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)」の訪問型、企業在籍型の支給件数の都道府県別一覧です。https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000675765.pdf

訪問型を見ると、三重、奈良が支給実績ゼロとなっています。その他の都道府県も、1とか2とかの数字が見られます。これは、「支給の件数」(すなわち、1件の支給に複数回の支援分が含まれている)であって、「支援件数ではない」ので注意が必要ですが、いずれにしてもゼロはゼロです。

ジョブコーチの助成金が障害者雇用納付金会計から雇用保険の会計に移ってから、訪問型による支援が急に縮小したように感じていました。前回の研究会で出された資料「ジョブコーチ支援制度と養成研修の現状等について」の8ページ「ジョブコーチの支援実績」でも、平成27年度から訪問型の支援件数が激減していることが分かります。https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000663209.pdf

「地域の就労支援の在り方に関する研究会(第二次)」(2014年3月)を振り返ってみました。https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000038701.htmlそこで示された方向性のうち「ジョブコーチの養成促進」という面ではかなり前進しましたが、「ジョブコーチの支援能力の向上」というテーマでは成果を上げられていないばかりか、むしろ訪問型が衰退しているのが現状と言わざるを得ません。主任職場定着支援担当者を中ポツに配置して地域のジョブコーチの助言を行う目論見は崩れ、そもそも助言をする相手の訪問型が地域に存在しない状況が起きているということです。

精神の雇用義務化を控えて行われた「地域の就労支援の在り方研究会(第2次)」以降、約5年の間、国の障害者雇用施策はどちらかといえば都市型、大企業による精神・発達障害者の雇用促進に重点を置き、確かに、その部分では雇用者数、企業の実雇用率の上昇という成果は上がりましたが、その間に、福祉と労働の連携で何とか形を作ってきた地方の就労支援体制が弱くなってしまったと感じています。

今回は、こうした職場適応援助者助成金制度の問題は論点に含まれませんが、せめて問題提起だけはして、次の検討の機会につなげたいと思っています。いろいろと考える機会を与えてくれる研究会です。